読書

海の底

海の底

読みました。今回も素晴らしい装丁。表紙の青と、それを捲ったところに現れる赤のコントラストが綺麗、とか思ったのですが、読み始めるとザリガニの赤に見えてきた…実際そうなんだろうけど。もしくは血の赤か。

今回の怪獣は巨大ザリガニで、「空の中」とは違ってもろ怪獣。大挙して横須賀から上陸、容赦無く人間を襲い殺します。何だかすごい話だなと思って読みつつ、ゴジラなんかの怪獣モノと違うのは、現れる怪獣と人間が簡単に戦う展開にならないこと。面倒な建前やら、政治上の手続きやら、権威ある人の無知や傲慢、本当に怪獣が現れたりしたら日本はこうなるんだろうなと思わせるリアリティ。でもそんな悔しい状況でも現場の人はそれぞれの立場で自分のやるべきことをやる。戦う男たちがとにかく格好良いです。機動隊が特に良かった。最後の戦いは素晴らしかったよ。彼らの思いを受け取って戦う陸自も。もう、色んなとこグッと来る。明石警部と烏丸参事官のコンビも良いです。とにかくみんなかっこよくて感動して、泣ける。守りたいっていう思いが。

あと警備パートとは別に、最初の怪獣上陸のときに、潜水艦に避難して閉じ込められた少年少女と海自実習生二人のパートがありまして、これもとても良い。青春もの上手だなぁつくづく。日を重ねるにつれ変化する関係とか、それぞれの成長とか夢中で読みました。茂久好きだよ、いい子だよな。圭介とかも最初大嫌いだったんですが、だんだん感情移入してきて、最後には何かすごく思い入れの強いキャラになってしまった。屈折加減とか、それに至る背景とか、とにかく描写がうまい。望ちゃんも良かったし、夏木と冬原の実習生コンビも大好きです。

あと、この本にも恋愛入ってて、それも良かった。予想外なとこから始まって、だんだん盛り上がっていくのがじんわり萌え。最後は素敵ですよー。おいしいなぁもう。

空の中」とはまた違う面白さで、とても楽しめました。こんな本が書ける人がいることが嬉しくて楽しくて悔しい。名作です。ぜひぜひおすすめ。2冊セットでどうぞ。

<21冊目>