タイタンの妖女

以前、爆笑問題の太田さんが絶賛されているのをTVで見て興味を持った本。宇宙の時間と空間の軸から外れてしまった男、ウインストン・ナイルズ・ラムファード。そして彼に運命を翻弄される大富豪、マラカイ・コンスタント。壮大な物語を語る視点は皮肉に満ちて、でもどこか温かい。無限に広がる宇宙のなかで、人間の存在はあまりに卑小で、必死にもがきあがく姿は滑稽で哀れだけれど、それを愛しくも感じる。宇宙の時間に比べれば小さな点にも満たない人生でも、そこに確かに幸せや優しさがある。計算されたストーリーも美しいけど、読んでいてじわじわと温かいものが沁みてくる小説。

<8冊目>