再読

黒と茶の幻想 (上) (講談社文庫)

黒と茶の幻想 (上) (講談社文庫)

黒と茶の幻想 (下) (講談社文庫)

黒と茶の幻想 (下) (講談社文庫)

文庫になったのを買って、ずっと読み返していました。こんなにしっかり読むつもりは無かったんだけど、捲ると止まらなくて。単行本を読んだのが一昨年の夏かな?図書館で借りて2日くらいで読んだ記憶が。恩田陸の中でも5本の指に入る大好きな作品です。大学時代の同級生男女4人が屋久島を旅するという物語。“安楽椅子探偵紀行”というテーマを掲げて、日常の中で起こった謎について4人で推理しながら進む旅、その中で4人の過去の謎が明らかになったり、関係が変化していったり、という。大きな事件が起こる訳でもないのだけど、これがものすごく面白い。本人達が言うように、馴れ合いや予定調和的な日常の会話じゃなく、知的で哲学的な探求に満ちた会話で、読んでいてとても刺激的で面白い。取り上げられる“日常の謎”や、過去をめぐる4人の駆け引きも。これを読むと、人間関係が一番のミステリーなんじゃないかと思わされる。視点が4人順番に変わっていって、それぞれで章が分かれてるんだけど、誰が本当はどういう人間なのか、何を考えているのか、相手に対してどういう感情を持っているのか、他の人の目で見ていると分からないことが、読み進めていくと明らかになっていく。人物も、その関係もとても恩田陸らしい気がします。読み返していてすごく幸せだった。本当に大好きな本。

屋久島の風景も良い感じで、読んでると屋久島に行きたくなりますね。あまりに美しい風景、大きくて深い森。そのなかの空気を自分も感じてみたい。こんな風に誰かと話しながら歩いたら幸せだろうと思う。本当、一生に一度は行ってみたいな。