黄色い目の魚

黄色い目の魚 (新潮文庫)

黄色い目の魚 (新潮文庫)

『一瞬の風になれ』がすごく面白かったので、この著者の他の本もと思い借りてみた。イラストレーターの叔父にだけ心を開く少女と、絵を描くのが好きな少年の話。粗筋だけ見て、あんまり私の好きな路線じゃないかもと思ったんですが、すっごく面白かったです。地の文が話し言葉に近くて、二人の気持ちが正直に綴られてて引き込まれた。高校生のあの時期特有の周りや自分への苛立ちとか、人との出会いによって変わっていく気持ちが瑞々しく書かれていて、とても良かった。二人の心がだんだん変化していく様がステキで、読んでいて切なく嬉しい。まだ二作しか読んでいないけど、この人の小説は、それが作り物だと忘れてしまうような、書かれている人が本当に存在するような体温が感じられる気がする。絵についての描写も面白かったです。

<9冊目>