しゃべれどもしゃべれども

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

少し前に映画化されましたね。成り行きで話し方教室を開くはめになった26歳の落語家・今昔亭三つ葉。集まった生徒は、黒猫のような美女、あがり症のテニスコーチ、口下手な元野球選手、大阪弁の少年。冗談のような始まりから、だんだんとお互いに絆が生まれていく。上手に思いやれなくて、でも気にし合う…その関係がすごく良くてジンと来ます。それぞれの登場人物も不器用だけど愛しくて、応援したくなる。落語にはあまり馴染みがないのですが、主人公の落語に向き合う気持ちや、“生徒”たちの練習する様子などとても面白く読めました。少し恋愛要素もあるのですが、そこも素敵。温かい気持ちになれる本で、おすすめです。

佐藤さんの小説は、読んでいるとすごく引き込まれるので好きです。読んでいる自分の存在も、書いている作者の存在も透明になって、ただ登場人物の姿だけを見つめてる、そんな気持ちになる。

<28冊目>