天帝のはしたなき果実

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

メフィスト賞受賞作。ずっと気になっていたのですが800頁の分厚さになかなか手を出せずにいました。大戦には負けたけど何故か軍国主義が継続してるパラレルな設定。軍隊、警察、国家権力強し。主人公・古野まほろを含む吹奏楽部の面々は、金管八重奏曲「天帝のはしたなき果実」で全国大会を目指す。しかし彼らの高校で首無し死体が発見されたことを発端に、事件に巻き込まれていく。この小説、とにかくすごいのが散りばめられたルビの嵐。「露茶沸器(サモヴァール)」だの「勿忘草色(フォゲットミーノット)」だの「漸次弱音(デクレッシェンド)」だの。英語あり仏語あり、もっと長い文章にまでルビ入ってる。最初は鬱陶しくて仕方がないけど、段々慣れてくるというか無いと物足りないまでに。衒学的で鼻に付く感じも、何か癖になる。青臭いのも薀蓄もミステリの特権。キャラクターは何故かお金持ちや由緒正しき血筋の人ばかりで、でもそれぞれ個性があって面白い。中盤、限定状況での推理合戦になったところは本当に面白くてぞくぞくした。でも最後が…良い意味なのか悪い意味なのか裏切られます。多分ダメな人は本当に受け付けないだろうし、好きな人はハマるだろうなぁという本。私は妙にツボを突かれてしまった。主人公も本当にどうかと思うけど、この壊れっぷりが何故か好き。続編読みたい、でも次も分厚いんだよね…

<20冊目>