墜落遺体―御巣鷹山の日航機123便

墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便 (講談社+α文庫)

墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便 (講談社+α文庫)

大学のときに授業で取り上げていて気になった本だったんですが、たまたま図書館で見つけたので借りてみました。1985年8月12日に起こった日航機墜落事故で、520人の遺体の身元確認の責任者をつとめた警察官の方が書かれた本。事故発生から、壮絶な検屍作業、すべての確認を終えるまでが克明に書かれています。私が幼いときに起こった事故なので、毎年ニュースで見かけるくらいで詳しいことを知らなかったのですが、これほどの事故だったと知ってショックを受けました。特に遺体の状態についての記述が凄まじく、人としての形をとどめないような状態にしてしまう航空機事故の悲惨さを知りました。40度近い締め切られた体育館で不眠不休で作業にあたられた警察官、医師、歯科医師、看護婦さんの仕事ぶりが細かく書かれていて、頭が下がります。仕事だからやっているというよりは、やらなければならないという使命感をもって、犠牲者や遺族の悲しみへの共感、人間としての愛をもって作業にあたられていて、心を打たれます。特に日赤の看護婦さんが印象的でした。子どもの遺体を抱き上げて背中をさすり頬ずりしてあげるという描写があり、思わず涙が出ました。

私は寝る前に本を読むことが多いんですが、これを読んでいる間は、本を閉じて明かりを消してもなかなか眠れず、考え込んでしまう日々が続きました。すごく辛かったですが、読んで良かった本です。死や人間に対する考え方を変えさせられました。興味のある方は是非読んでみてください。

<62冊目>